大連慕情/松任谷由実

今回は松任谷由実さんの「大連慕情」です。

亡き父に思いを馳せる娘の心情を描いた、ユーミンにはめずらしい「父母」をテーマにした曲とのこと。
ドラマは若い頃の父が母に宛てた古い手紙を娘が見つけるところからはじまります。すっかり黄ばんでしまったその手紙は、若い頃、大連に暮らしていた父が母に宛てて書いたもの・・・おそらくこの手紙が書かれたのは戦前の日本統治下にあった頃の大連で、歌に登場する「父」は当時満鉄なんかに勤務するエリートさんだったのかもしれません。
「アカシアの香りただよう春の大連はお父さん、きっとあなたによく似合ったでしょう・・・」遠い異国に在った若き日の父の姿を心の中に描きながら、大好きだった父に思いを馳せる・・・ひじょうにノスタルジックで、ともすれば歌に描かれる人々のどこか育ちの良さみたいなものまでもが伝わってくるような、そこはかとない品をも持ち合わせているような曲に思います。

音の方はといいますと、いわゆるチャイナっぽい要素はいっさいなくて、春先の海岸を思わすようなピュアな都会風サウンドに仕上がっています。しかしながら潮風のにおいとか、なんとなく水辺の街の雰囲気だとか、おそらく大連という街が中国のどのへんにあるのかよく知らなくても「ああここはきっと港町なんだろうな」というのが音の表現だけでもわかるような曲で、それはもうまるで音符を絵の具にして絵を描いてるみたいで、こういう曲を聴かされるとやっぱユーミンってすごいんだなと、改めて舌を巻かずにはいられません。


水の中のASIAへ
 松任谷由実
 Release:1981
「大連慕情」収録
 


 


この曲はユーミンの1981年発表のアルバム「水の中のASIAへ」に収録されている曲ですが、元々は女優の萩尾みどりさんへの提供曲(1977年)だったそうで、後にユーミンがセルフカバーしたかたちになったようです。
萩尾みどりさんが歌を唄っていたとは驚きでしたが、いちおう聴いてみましたら、職場の飲み会のカラオケで嫌がる先輩女子にむりやりマイク持たしたらこうなった的な感じで、なかなか微笑ましいものがありました・・・汗。編曲はいずれも松任谷正隆氏が手がけているようですが、萩尾さんバージョンの方にはちょびっとだけチャイナ的サウンド要素が加えられています。

 作品データ 

大連慕情
リリース:1981(昭和56)年
歌:松任谷由実
収録アルバム「水の中のASIAへ」
作詞/作曲:松任谷由実
編曲:松任谷正隆

大連慕情

大連慕情

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