矢野顕子さんの1982 年のアルバム「愛がなくちゃね。」に収録されている、全詞英語のとても短い曲です。
矢野さんがイギリスのバンドJAPANのボーカル、デヴィッド・シルヴィアンとデュエットしています。
アルバムの一番最後に収録されている曲ですが、一貫して心地よい終末感に満ちた、まさにアルバムの幕切れにふさわしい雰囲気を持った曲です。
わずか7行ほどの短い歌詞は、男女のささいなすれ違いの後の仲直りを思わせるもの。
お互いの気持ちが再び通い合ったところで「じゃあ灯りを消すよ。そろそろ『おやすみなさい』しなくちゃ」と締めくくられます。
なんとなくそのまま不思議な夢の世界へ誘われてゆくような気がするのは、エリック・サティのピアノ曲を思わすような、不協和音が美しいメロディラインのせいかもしれません。
作曲は現代音楽の作曲家高橋悠治氏によるもので、もともとは高橋氏が時計メーカーのCMのために書いたわずか30秒ほどのピアノの小品だったようですが、これに矢野顕子さんとピーター・バラカン氏が詞をつけ「Good Night」として発表することになったようです。歌詞のない高橋氏の原曲の方は「時計草」という別タイトルがつけられており、こちらは高橋氏とメゾソプラノ歌手波多野睦美さんの共作アルバム「ゆめのよる」のなかで聴くことができます。
時計草(高橋悠治)
波多野睦美&高橋悠治
収録アルバム:ゆめのよる
矢野顕子さんのチャーミングな歌声とデヴィッド・シルヴィアンの包み込むような甘い低音ボイスのかけあいも美しく、わずか一分半程度の短い曲ながら、一度耳にすれば後々まで強い余韻があとを引く、ファンタジックな魅力にあふれた一曲です。
作品データ
Good Night
リリース:1982(昭和57)年
歌:矢野顕子・David Sylvian
収録アルバム「愛がなくちゃね。」
作詞:矢野顕子・Peter Barakan
作曲:高橋悠治
編曲:坂本龍一・矢野顕子