ミドリ色の屋根 /ルネ・シマール


ミドリ色の屋根
 ルネ(René Simard)
 release:1974

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昭和49年、日本の音楽シーンに彗星のごとく現れたというフランス系カナダ人の少年シンガー、ルネ・シマール。この年東京で行われた国際規模の音楽コンテスト「第三回東京音楽祭」に弱冠13歳で出場し、スリー・ディグリーズや布施明といった並みいるベテラン勢を抑えて見事グランプリを獲得。そのたぐいまれな歌唱力と小公子然とした愛くるしいルックスで一夜にしてスターの座へ駆け上がったというなかなかの華麗な経歴の持ち主です。残念ながら私はリアルタイムでの見聞きはかなわなかった世代ですが、まさに天使のごとき歌声、みごとなボーイ・ソプラノです。思いがけなく可愛らしい黒船の襲来に当時の日本のお茶の間はさぞかし色めきだったことでしょう。

さて、このときのグランプリ受賞曲となったのが「ミドリ色の屋根」ということですが、意外にも詞曲アレンジとも作家陣は全員日本人という完全なるMade in Japanの曲です。調べたところによると、この曲は初めからルネ・シマールに東京音楽祭に出て歌ってもらうという想定のもとに作られた曲だったようです。いろいろ書き始めると取りとめがなくなってしまうのでここではあえて端折りますが、彼が日本デビューを果たすまでには、昔も今も日本を代表するような超一流の音楽関係者から、仕事ぶりは確かながらもそれ以外のところでは少々危なっかしそうな御仁( ̄▽ ̄;)まで実に様々な人物が関わっていたようで、そのあたりの事情をいろいろひもといてみますと、まさしく魑魅魍魎渦巻く昭和の”ザ・芸能界”という感じでなかなか興味深いです。


世界は俺が回してる
なかにし礼(著)
「東京音楽祭」を一から作り上げた実在の剛腕テレビマンの一代記。
第3回大会に出場したルネ・シマールについても触れられている箇所がある。

 

村井邦彦×川添象郎「メイキング・オブ・モンパルナス1934」対談 第2弾 - Real Sound
アルファレコード創業者ふたりによる対談記事。いずれもルネ・シマール日本デビューの仕掛人。対談内でルネ・シマールのことについてもちょっとだけ触れている。

話が少し脇にそれてしまいましたが、肝心の曲はといいますと、歌詞は両親の別離に接した子ども目線で描かれるもので、夫に家を出て行かれて毎日泣き暮れてばかりいる母親を幼い息子が懸命に慰めるという内容です。「ママがこれ以上悲しまなくてもいいように今すぐ二人でこの家を出て、あのいなかにあるミドリ色の屋根のおうちに引っ越そう。いつか大きくなったらぼくがママにしあわせをあげる。だからもう泣かなくていいんだよ」というわけです。まさに聴くも涙語るも涙の物語です。

この曲にはフランス語バージョンもあるようで、タイトルは「Non Ne Pleure Pas(泣かないで)」。Google先生の力を借りながら歌詞を読んでみますと、父親が家族を捨てて家を出ていき、悲しみに暮れる母親を息子が懸命に励ますという内容は日本語版とほぼ一緒のようですが、決定的に違うのは、仏語版の方にはどうやらミドリ色の屋根の家の描写は出てこないっぽいことと、あと、母子はどこへも引っ越すことなく、元の家にとどまって父親の帰りを待ち続けるという展開になっていることです。いずれにしてもとても悲しく、そして美しい曲です。

そんなドラマティックな曲をまるで自身の物語であるかのように切々と情感たっぷりに歌い上げていたおかっぱ頭のルネ少年も、今や還暦を迎えたステキなおじさまに♪



アルバム「René Simard」(2015)より

さすがに「ミドリ色の屋根」は入ってないみたいですが、なかなかのオーソドックスな佳曲ぞろいの印象

 

現在も本国カナダの芸能界でバリバリにご活躍のようです。

 

  作品データ  

ミドリ色の屋根
リリース:1974(昭和49)年
歌:ルネ(René Simard)
作詞:さいとう大三
作曲:村井邦彦
編曲:馬飼野康二

ミドリ色の屋根

ミドリ色の屋根

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  • J-Pop
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