愛のサンバは永遠に/伊藤愛子

伊藤愛子さんというシンガーの歌う「愛のサンバは永遠に」という曲を聴きました。
恥ずかしながら存じ上げませんでしたが、伊藤愛子さんは昭和30年代から活躍する(1962年、13歳でデビュー)超ベテランシンガーとのこと。
楽曲のリリースは1982年。当時EP盤が出たきりで長らくCD化はされていなかったようですが、現在は以下のコンピレーション・アルバムでデジタル音源化されたものを聴くことができます。ジャケットがちょっと怖いですが。


泥んこのメルヘン~女たちの挽歌II~
 コンピレーションアルバム
 relese:2018
 伊藤愛子「愛のサンバは永遠に 」収録

 

近頃はあまり表立った活動をされてないのか、なかなか情報の少ない伊藤愛子さんですが、今から38年前にテレビの音楽番組に出演してこの「愛のサンバは永遠に」を歌っている貴重な映像を見つけました。「夜の指定席」というNHKの番組に出演したときのもののようです。当時ちょうど公演のために来日していたらしい今は亡きブラジルの伝説的名サンバ歌手クララ・ヌネス (Clara Nunes)がメインゲストで出演している(翌年クララ・ヌネスは不慮のアクシデントにより38歳の若さで急逝)、今風にいえばかなり”神回”な映像でしたが、伊藤さんは番組中盤に登場し、サンバについてのちょっとした豆知識を紹介したあとで「愛のサンバは永遠に」を歌います。どういうわけか曲の途中でいきなりオートバイの集団が爆音を轟かせながら乱入してくるという、およそ歌の内容とは関係ない、まったくもって意味不明な演出のもとで歌わされてる伊藤さんですが、そんな噴飯ものの状況ももろともせず、朗々とした歌声でこの美しいサンバ・カンサォン(サンバのバラード)の曲を哀切たっぷりに歌いあげています。(こそっとリンク貼っておきます→YouTube

さて、この曲は本場ブラジルの楽曲をカバーしたものになりまして、ブラジルの超大御所シンガー、アルシオーネ(Alcione)が1975年にリリースした「Não deixe o samba morrer」という曲が原曲です。日本では「愛のサンバは永遠に」という邦題がつけられてますが、原題は直訳すると「サンバを絶やしてはいけない、サンバを死なせないで」という意味になるようです。


Não Deixe O Samba Morrer
 Alcione
 収録アルバム:A Voz Do Samba
 release:1975

 

 

大津あきら氏が日本語詞をつけた伊藤愛子さんバージョンは、男女の別れのシーンを描く歌になっていますが、本家本元は、そろそろ自らの引き際を悟り始めたサンバダンサーが、次の世代を担う若きサンバの継承者たちに、世代が変われどもどうかサンバの魂だけは変わらず守り抜いていってほしいと願いをこめる歌。「思うようにサンバのステップが踏めなくなったら、だれかふさわしい人にこの道を譲って、私はカーニバルを去ろうと思う。だからお別れする前に私の最後の願いを若いサンビスタ(サンバの演奏者やダンサー)たちに伝えておきたい。『どうかサンバを死なせないで、サンバを絶やさないで』と」と、思わず鼻の奥がジーンとしてしまうような、サンバ愛と後進への愛情にあふれた、万感胸に迫りくる内容です。

さてこの曲は今もってなお人気がある曲のようで、2000年代に入ってからも日本では中山うりさんというシンガーが、「セブンカラーズ」というアルバムの中でこの曲をカバーしています。歌詞は原曲の世界観をほぼ踏襲している感じです。


セブンカラーズ
 中山うり 
 relese:2010
「愛のサンバは永遠に (nao deixe o samba morrer)」収録

 

本国ブラジルでも、現在MPB(ブラジリアン・ポップス)界最高の歌姫とよばれるマリア・ヒタ(Maria Rita)が歌っていますが、これがまた素晴らしいのなんの。彼女のお母さんは、日本でいえば美空ひばりのような歌手だったエリス・レジーナ(Elis Regina )だそうで、こうなるともうDNAの神秘に思いを致さずにはいられません。とてつもない忘れ形見を残していってくれたものです。屈託のない笑顔もそっくりな気がします。(母娘だものね)


Não Deixe O Samba Morrer (Videoclipe) - Maria Rita


どうやらサンバは脈々と生き続けているようです。
(肝心の伊藤愛子さんの話がどっかいってしまった・・・汗)

 

  作品データ  

愛のサンバは永遠に(「Não deixe o samba morrer」のカバー)
リリース:1982(昭和57)年
歌:伊藤愛子
作詞:大津あきら(日本語詞)
作曲:EDSON CONCEIÇÃO,ALOÍSIO SILVA
編曲:佐藤富士雄
※下記アルバムに収録あり

泥んこのメルヘン~女たちの挽歌II~

泥んこのメルヘン~女たちの挽歌II~