北京ダック/細野晴臣


北京ダック
 細野晴臣
 収録アルバム:トロピカル・ダンディー
 release: 1975
   

 

細野晴臣氏の1975年の楽曲。
歌の主人公が横浜の中華街で遭遇した火事騒ぎのどたばたぶり(もちろん架空のお話)を、ラテンのリズムに乗せて歌うというとてもユーモラスな曲です。

雨が降る日、横浜に来てみたら、中華街が真っ赤な炎に包まれていた。
火はぼうぼうと燃えさかり、消防車のサイレンがけたたましく鳴り響き・・・
そのなかをアヒルが必死に逃げまくっていた。
あれはきっと北京ダックにされるアヒルだったにちがいない。食べられずにすんでよかったネ・・・

と、最初聴いたときには何が何やらさっぱりわかりませんでしたが、よくよく歌詞を読んでみると、ざっとこんな感じのことを歌っているようです。

北京ダック(細野晴臣) 歌詞

それにしてもフィクションとはいえ横浜の中華街を燃やしてしまうという、ちょっとしたことですぐにお叱りの対象になる昨今ではなかなかお目にかかれない感じの攻めた歌詞の曲ですが、細野晴臣さんはこの歌をひっさげて何度か横浜中華街でもライブをしているようなので、そのへんは特に問題なさそうです笑。

さて、この曲に使われているリズムのお話ですが、このリズムは「バイヨン」という、ブラジル由来のリズムだそうで、細野さんが20代の頃から愛してやまないリズムのようです。拍は「どんどどん、どんどどん」という、あのオールナイトニッポンのテーマ曲(「ビタースウィート・サンバ」)みたいな感じ。細野さんは、米国の音楽家ヴァン・ダイク・パークスVan Dyke Parks)が1972年に発表したアルバム「Discover America」の中の、「カリプソの王様」と呼ばれるマイティ・スパロウ(Mighty Spallow)というシンガーが歌った「Jack Palance」という曲でこの「バイヨン」に出会い、その魅力にとりつかれたようです。


Jack Palance
 Van Dyke Parks
 収録アルバム:Discover America
 release: 1972
 アルバム冒頭に収録されている、なぜかぶつっと尻切れトンボのように終わるわずか1分程度の短い曲。
 

 

そしてこのバイヨンのリズムに、藤子不二雄A先生の「北京塡鴨(ダック)式」というブラックユーモアの短編漫画から着想を得て紡ぎ出した物語(詞)をのっけて誕生したのが、この「北京ダック」なのだそう。横浜の中華街が舞台になっているのは、その頃細野さんが求めていた混沌としたオリエンタルのイメージに、当時の横浜中華街の怪しげな雰囲気が見事マッチしたからのようです。ちなみに曲のヒントとなった藤子A先生の「北京ダック式」という漫画は、「藤子不二雄Aブラックユーモア短編集」という本(第2巻)で読むことができます。かなり不気味なお話です・・・。(不気味というか食欲なくなるというか・・・)


藤子不二雄Aブラックユーモア短編集(2)
藤子不二雄A(著)
「北京塡鴨式」収録

 

この「北京ダック」には、アレンジ違いのシングル・バージョンもありまして、今回ご紹介したアルバム・バージョンとはまたちょっと違った趣きです。(シングルだけによりよそゆき感が増しているような感じ)

カバーもされてまして、尾崎亜美さんが自身の「Amii-Phonic」というアルバムの中で、細野晴臣さんとデュエットするかたちでカバーしています。


Amii-Phonic
尾崎亜美
relese:2001
このジャケットが好き。

 

つい長くなってしまいました。今回はこのへんで失礼いたします。

<参考記事・文献>
細野晴臣、『HOCHONO HOUSE』制作体験とルーツを体現した音楽世界 中野サンプラザ公演レポ - ぴあ
HOSONO百景: いつか夢に見た音の旅 /細野晴臣北中正和河出文庫)→ Amazon
細野晴臣インタビューTHE ENDLESS TALKING /細野晴臣、中矢俊一郎(平凡社ライブラリー)→ Amazon


  作品データ  

北京ダック
リリース:1975(昭和50)年
歌:細野晴臣
作詞・作曲・編曲:細野晴臣

北京ダック

北京ダック

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